スポーツ栄養講座⑥(高校生編) スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと(2)

スポーツ栄養講座6回目のテーマは『スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと(2)』です。
スポーツを頑張る高校生のための食事のとり方やその注意点について解説します。

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※記事中の関連図表は動画内で参照できます。記事と動画、合わせてご覧ください。


●量よりも質! 3時間勝負の「睡眠」

スポーツを頑張っている皆さんの理想的な睡眠時間は、「7時間」といわれています。長く眠ればいいかといわれるとそうでもありません。

一晩の睡眠で「浅い眠り」と「深い眠り」が繰り返されて、朝を迎えることになります。浅い眠りを「レム睡眠」、深い眠りを「ノンレム睡眠」と呼び、前者は主に身体、後者は脳をそれぞれ休ませる役割をもっています。みなさんの成長に必要なホルモンは、深いノンレム睡眠時に分泌が促進されます。

深いノンレム睡眠は入眠1時間後、2時間後、3時間後で訪れますが、4時間後以降は成長ホルモンの分泌促進が終わっています。ですから、入眠3時間後までに深い眠りにつくことが質の良い睡眠(=成長のためになる)をとるために重要となります。

成長ホルモンの分泌促進のために早く深く眠りにつきたいのですが、高校生(中学生)たちの天敵になる物があります。ズバリ、「スマートフォン」です。スマホで動画を見たり、ゲームをしたりと楽しくなってついつい遅くまで夢中になってしまうでしょう。ハードな練習の後ですから、なおさらです。

しかし、スマホから出る光は太陽とほぼ同様の明るさで、脳を刺激して覚醒させてしまいますし、眠る前にたくさんの情報を得てしまうとかえって脳が働き、眠りに入りづらくなってしまいます。成長のためにも、眠る前のスマホやゲームはできる限り避け、早く深くノンレム睡眠に入りましょう。

●ストレス状態の継続には注意

高校生年代は顕著な成長をとげる半面、精神的に不安定な時期ともいえます。特に、スポーツを頑張る人たちは、小さいころから高いレベルで活躍することを目標にしてハードなトレーニングを続けています。

練習や試合で負う身体的なストレスはもちろん、「がんばらなきゃ」「勝たなきゃ」といった精神的なストレスを常に受け続けている状態といっていいでしょう。この状態が続くと、「慢性疲労(ステルネス)症候群」や「オーバートレーニング症候群」に陥ってしまいます。

これらは、気持ちがついていかずに体が動かなくなってしまい、最悪の場合、選手生命を絶ってしまう恐れもあります。選手自身が気をつけるのはもちろんですが、指導者のみなさんも選手のメンタルケア休むべき時には休ませることを検討していただきたいと思います。

●自分への栄養ケアは自己管理能力の向上に

最もエネルギーが必要な高校生年代にとって、3食きちんととることは成長を促すことにつながります。また、決まった時間に食事をとることで、消化酵素の分泌が活発になり、栄養を効率良く吸収できるようになります。

そして、何よりも大切なのが、自分自身で「いつ」「何を」「どれだけ」食べればいいかを理解する、考えることです。これが、自己管理能力の向上に結びついてきます。

高校を卒業して、さらに高いレベルで活躍する人もいるでしょう。海外で活躍する人もいるかもしれません。その時、いかに自分をコントロールして競技に集中するか、自分にとって身になる食べ物を選択できるか。これを当たり前のようにできるのがトップ選手たちなのです。高校生年代は、自己管理能力を高める最後のチャンスなので、意識して食べ物、栄養と向き合うと良いでしょう。

最後に、成長のために食べ物や栄養への意識をする以前に、食べることが苦にならないようにしてほしいと思います。

食べることは楽しいことですし、おいしい物を食べれば心も安らいできます。反対に、無理をして食べても体にうまく吸収されませんし、体重制限などで食べたいのに食べられない、食事も楽しむことができない。これでは、体が成長するはずがありません。

ですから、食事が楽しみになるように、指導現場、家庭でもどうするかを一緒に考えていただきたいですね。


●坂元美子氏プロフィル(神戸女子大学)
スポーツ栄養学がほとんど知られていなかったころからプロスポーツ現場での栄養指導に携わり、0からノウハウを確立。特に、野球、サッカーの成長期世代の栄養指導・サポート経験が豊富で、チームの強化にも一役買っている。長年の指導経験を後進に伝えながら、多くの人にスポーツ栄養学を知ってもらうべく、活動中。
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※この記事は、スポーツ・運動と食を結ぶwebマガジン「すぽとり」で掲載された記事を再編集したものです。
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