漁獲量の減少!?さんまはいったいどこに?

秋の味覚の代表格であるさんま。
青魚の中でも特に人気が高く、脂のったジューシーな身は旬のさんまならではのおいしさですね。
ところがここ数年、さんまは記録的な不漁で、店頭に並ぶ数も激減しています!
今回はさんまの不漁とその秘密に迫ります。

【知られていなかったさんまの生態】

さんまは回遊魚で、かつおやまぐろと同じく、世界中の海を渡り歩いて…正しくは、泳ぎ回っています。
回遊魚というと、夏になり、海水温が上がったときは北の海に行き、季節が変わって海水温が下がると、今度は南下して海水温の温かい場所で冬を過ごすというサイクルを連想されますよね。
さんまも適温の海域を求めて、さまざまな場所に移動しています。
ここまではよく知られているのですが、それ以外の生態について明らかになったのは、なんとここ10年ほどの研究だというから驚きです。
古くから日本の食卓に並び、秋の味覚として愛されてきたのですが、実は私たちはさんまについて多くのことを知らなかった…!と言えるでしょう。
実は、さんまはとても短命な魚で、寿命は2年ほど
さんまよりもっと小ぶりないわしは6~7年の寿命だと考えると、その一生の短さが際立ちますね…。
寿命が短いためなのか、さんまは1年中産卵可能なことが特徴です。
さまざまな場所で産卵して、いろいろなところに卵を残すことが生存戦略なのではと考えられています。

【乱獲?それとも…】

この数年、日本近海のさんまは不漁が続いています。
最盛期の半分以下の漁獲量が続き、さんまの価格そのものが高騰している状態です。
このまま漁獲量の減少が続けば…?
食卓の救世主だったのは過去の話、さんまが庶民には手の届かない高級魚(!)になる日がくるかもしれません。
さて、この情報だけを読むと、「世界的な魚の需要の高まりで、あちこちでさんまが乱獲されているからでは?」と思いがちです。
確かに、健康効果を見込んで、世界の魚需要はこの50年ほどで大きく跳ね上がっています。
実際、国際会議のひとつ、北太平洋漁業委員会(2021年2月開催)では、さんまの漁獲量規制への合意がされるなど、漁獲量を抑える動きが始まっています。


しかし、さんまの漁獲量の減少について、直接的な原因はわかっていません。
漁獲量の問題だけではなく、海水温の変化などによって、さんまの生息数事態に何か影響があったのではと考える説もあり、研究が進められています。
さんまの生態が解明され始めたのは、近年になってから。
まだまだ分かっていないことが多い状態です。
一般消費者の私たちにできることは本当に少ないのが事実です。
海洋汚染を防ぐために、ごみの廃棄に注意することや、食べ物を無駄にしないこと。
などの基本的なルールを守りながら、新しく発信される正しい情報をチェックしましょう!

【さんまと血行】

さんまの健康効果については、よくご存じの方も多いと思います。
特に有名なのが、さんまの脂に不飽和脂肪酸のDHA・IPA(EPA)が豊富に含まれることです。DHA・IPA(EPA)は血液をサラサラにして、血栓の予防に役立ってくれるので、生活習慣病が気になる方には嬉しいですよね。
秋になり旬を迎えたさんまは、脂のノリがよいので、不飽和脂肪酸がたっぷり!
おいしくて健康にもよいなんて、いいことづくめです。(※エネルギーが高くなるので、食べ過ぎは禁物ですが)
そのほか、造血のビタミンと呼ばれるビタミンB12も多いので、貧血になりやすい方や、女性の方にもおすすめです。

健康にもよい効果があるさんま。
できれば漁獲量の減少が止まり、秋の味覚として家計と食卓を助けてくれる存在であり続けてほしいですね。

日本人は古くから魚を好んで食べていましたが、まだまだ魚について知らないことがたくさんあります。
さんまの漁獲量の減少は、そのことを教えてくれているのかもしれません。
今年のさんまを食べるときは、ぜひ、さんまの現状についても思い出してくださいませ☆

Text byはむこ/食育インストラクター