秋の味覚、さんまを取り巻く話題に迫る!

みなさんは今年のさんまを召し上がりましたか?
さんま漁が解禁になれば全国でニュースになるほど、日本人にとってさんまという魚は大切な存在です。
今回はそんなさんまと日本人の関係にスポットをあててお話します!

【秋の訪れを告げる魚…だった?

説明不要のおいしさで、秋の味覚の代表格であるさんま。
海水温度が比較的低い場所を好むため、夏場は北の方に移動していますが、秋になり、水温が下がるにつれて南下を始めます。
この南北を移動する生態はかつおと似ていますが、かつおの場合は海水温が比較的温かい場所でも生息でき、黒潮にのって北上するのも、いわしなどの小魚が集まる場所へ移動するためなので、さんまとは事情が異なります。

そんなさんま漁が解禁になるのは、例年通りなら8月に入ってから。
現在の暦では9月から秋なので(残暑が厳しくて秋らしくないのは置いておくとして)、さんま漁が本格化する時期は、夏の終わりと秋の訪れを告げるタイミングだったのですが…。
実は、2019年、つまり今年から、さんま漁は通年解禁となりました。
さんまの漁獲量が激減しているための措置とのことですが、漢字では「秋刀魚」と書くほど秋のイメージが強い魚です。
漁師の方の間でも、漁獲に積極的ではない方が少なくないようです。

さんまの不漁の原因はさまざまですが、この状態が長く続けば、いずれはいわしのように価格が跳ね上がってしまう日や、梅雨の時期にさんまを食べる日が来てしまうのでしょうか…。
今後の動向が見逃せない話題ですね。


【「按摩が引っ込む」理由を考えてみる

日本には昔から「さんまが出ると按摩(あんま)が引っ込む」ということわざがあります。
「トマトが赤くなると医者が青くなる」、「一日一個のリンゴは医者を遠ざける」と同じような意味合いですが、さんまは体によい栄養素を豊富に含んでいるので、こんなことわざが生まれたのも納得ですね。
それにしても、さんまの場合だけほかのことわざと違って医者ではなく按摩なのはどうしてなのか、ちょっと気になりますよね。

まず、トマトやリンゴのことわざは日本で生まれたものではないため、翻訳した時に医者と訳したと考えられます。
そして、江戸時代ごろ、さんまは下品な魚として庶民しか食べていなかった。
そして現代ほど医療の発達していない時代は医師の数も少なく、庶民にとってかかりつけといえば医師ではなく按摩だった。
…なんとなく繋がりそうなのですが、これだ!といえる明確な理由を突き止めることはできませんでした。
ただし、栄養の面から見ると、医者ではなく按摩になった理由もうなずけるのです

まず、按摩は「気血の流れをよくする施術」とのことで、西洋のマッサージと同じく、血液循環を改善させる目的がある施術です。
さんまには不飽和脂肪酸(IPA・DHA)や鉄・ビタミンB12などが豊富に含まれ、これらはすべて血行促進に役立つ効果があります。
具体的には不飽和脂肪酸が血液をサラサラにし、ビタミンB12が鉄を使って新しい血液を作る。という、血液循環の改善に必要な効果が盛りだくさんなのです。
(※血液をつくる時にはビタミンB12だけではなく、葉酸も必要です)

こう考えると、ほかの食べ物のことわざには登場しない按摩が、さんまにだけ出て来るのも合点がいきますね。
根拠が明らかになっていない時代でも、さんまを食べると血の巡りがよくなることをなんとなく体感していた方が多かったがゆえに生まれた言葉だったのかもしれません。
血液の健康維持は現代でも大きな課題のひとつです。
生活習慣病や悪性の貧血に悩まされる人も多いですが、さんまはその予防に役立ってくれる存在です。
昔から今まで日本人の健康を支えてくれているんですね。

さんまは日本の秋に欠かせない大事な魚です。
焼き魚に揚げ物、煮物…それから、冷蔵技術と流通が発達した現代では、傷みやすいさんまをお刺身でおいしく食べられるようにもなりました。
さまざまな楽しみ方ができる大衆魚を、ぜひご堪能下さい☆

Text by はむこ/食育インストラクター

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