アレルゲン原因食物別の注意点と調理の工夫

食物アレルギーがある子どもは年々増加傾向にあり、特に1才未満の乳児で最も多く発症します。
小児に食物アレルギーが多いのは、成長・発達段階で消化機能が未熟なため、アレルゲンであるたんぱく質を消化できないことが要因のひとつにあげられます。
そのため、成長とともに消化・吸収機能が発達すると食べられる場合も多くみられます。

【食物アレルギーとは?】

食物を摂取したときに、身体が食物に含まれるアレルゲン(主としてたんぱく質)を異物として認識し、自分の身体を防御するために、過敏な反応を起こすこと。
アレルゲンにはダニ、花粉、食物などさまざまなものがありますが、なかでも食物が原因でアレルギー反応を引き起こすものを「食物アレルギー」といいます。

【食物アレルギーにはどんなものがあるの?】

特に鶏卵が多く、次いで牛乳、小麦が報告されています。
また食品衛生法により、アレルギー表示が義務付けられています。(あらかじめ箱や袋で包装された加工食品、カン・ビン詰めの加工食品)

<表示義務があるアレルゲン(特定原材料)7品目>※2022年2月現在

●卵、乳または乳製品、小麦、そば、落花生、えび、かに
※特に発症数、重篤化しやすいといった理由から表示を義務付けられているもの

<表示が推奨されているアレルゲン21品目>※2022年2月現在

アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン
※症例数や患者数はあるものの、特定原材料に比べると少ないもの

※表示するか否かは各メーカーに委ねられているため、食物アレルギーのある方は確認するとよいでしょう

【食物アレルギーで引き起こす主な症状】

軽い症状としては、かゆみ、じんましん、唇やまぶたの腫れ、嘔吐などがあり、重篤な症状では、意識障害、血圧低下を招いたりするアナフィラキシーショックなどがあります。


【特に多い鶏卵・乳または乳製品・小麦!気をつけたいポイント】

■鶏卵
症状が出やすいのは、卵黄よりも卵白に含まれるたんぱく質です。
しかし卵白のたんぱく質は、加熱によってある程度、アレルゲンを低減させることができます
マヨネーズやカスタードクリームなど、加熱が十分でない食品を食べるとアレルギー症状が出る場合でも、パンや焼き菓子のように高温で加熱した食品はアレルゲン性が低いため、食べられる場合があります。
アレルゲン性の強弱は加熱温度や加熱時間だけでなく、その食品に含まれる鶏卵たんぱく質の量によっても異なります。

<調理の工夫>
ハンバーグのつなぎには、卵の代わりに片栗粉やれんこんのすりおろしを使うとよいでしょう。
ケーキや焼き菓子はベーキングパウダーでふくらましたり、バターや牛乳などを加えてしっとりさせるといった工夫をすると◎。

■乳または乳製品
牛乳のたんぱく質は加熱や発酵によってアレルゲンが低減することはありません

そのため、乳を含む食品のアレルゲンの強弱は、その食品に含まれる乳たんぱくの量によって考えます。
アレルギーの人でも、乳たんぱくの少ないバターを使ったものは食べられる場合があります。
また、牛乳や粉ミルクを飲んで下痢などを起こす場合、アレルギーとは異なり、乳糖不耐症のケースもあるので、主治医に相談してみてくださいね。

<調理の工夫>
ホワイトソースやシチューは豆乳やコーンクリーム缶、ココナッツミルクなどで代用できます。
小麦粉や片栗粉でとろみをつけたり、じゃが芋などを煮崩してとろみにしてもよいでしょう。

■小麦
小麦のたんぱく質は、加熱や加工による影響はあまり受けません

そのため、アレルゲンの強弱は小麦粉に含まれる量で考えます。
薄力粉は強力粉よりもたんぱく質(グルテン)が少ないため、アレルゲン性は低いと言えます。
小麦粉は多くの食品に使われています。
米粉パンにもグルテン(小麦のたんぱく質)が入っている場合があるため、原材料を確認するようにしてください
また、しょうゆにも小麦粉は使われていますが、発酵過程で小麦たんぱくは分解されているため、除去する必要はありません。

<調理の工夫>
焼き菓子や天ぷら、フライの衣などは米粉で代用、めんはビーフンやフォーなどで代用できます。
ルーは片栗粉やじゃが芋のすりおろしなどで代用してもよいですし、アレルギーに対応したルーも販売されているので利用してみるのもよいですね。

【必要最小限の除去が大切】

食物除去は栄養不足にならないように最小限にとどめ、食べられる範囲までは積極的に食べるようにすることが望ましいと考えられています。
念のため、心配だからといって必要以上に除去する食物を増やさないようにしましょう。

いかがでしたか。
食物アレルギーは安全においしく食べられる工夫が大切。
家族や周囲のみんなも一緒に楽しみながら食卓を囲めるといいですね。

Text byくまこ/食育インストラクター