食べた栄養素は体の中でどうなるの? 食物繊維編

栄養素についてゆる~くお伝えするシリーズ、今回のテーマはお腹の味方、食物繊維についてです。

【不要と言われた不遇な歴史】

食物繊維がお腹によい。ということは現代の日本でよく知られています。
特に、便秘に悩む方にとって、重要な栄養素と言えるでしょう。
しかし、食物繊維はかつて、食べても栄養にならないゴミだと思われていました。
確かに、食物繊維は人間の体で消化できず、吸収もされずに排泄されます。
栄養素を吸収して体を動かしている人間にとって、不要と思われるのも無理はありません。
風向きが変わったのは、1970年代になって、大腸がんと食物繊維の関係についての研究が発表されて以降です。
その後はいろいろな側面から食物繊維の研究が進み、今では五大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル)に続く、第六の栄養素とまで言われるほどになりました。

 【消化されないからこそ】

食物繊維がこれほど重要な位置づけになった理由は、消化されないことにあります。
消化されないまま消化器内を移動して、腸の中で余分な老廃物などを絡め取って、便として排泄してくれます。
いわば、消化器のお掃除屋さんなのです。

そんな食物繊維は大きく二つ、水溶性と不溶性に分類されます。
腸のお掃除をしているのは同じですが、少しだけ役目が違います。
掃除機担当とモップ掛け担当ぐらいの違いが近いイメージでしょうか。
不溶性食物繊維は腸を刺激して腸のぜん動運動を促し、排便しやすくします
水溶性食物繊維は粘着性があり、体の中をゆっくり移動します。
そのため、腹持ちがよく、お腹が空きにくくなる効果があります。
また、不要なコレステロールや胆汁酸を吸着して排出を助けてくれます
そのほか、腸内細菌にとって食物繊維は大切な栄養源です。
善玉菌が食物繊維を食べて増えることで、腸内環境が整い、肌荒れ防止や免疫力の向上など、体全体の健康を支えてくれています。
人間には消化できないからこそできる役割が、ちゃんとあるのですね。


【日本人に不足がち?】

昔ながらの和食を食べていたころ、日本人は食物繊維をとても多く摂取していました。
しかし、戦後になって洋食の普及や安価な嗜好品がありふれるようになると、一日の食物繊維摂取量は減少していきました。
現在では男女とも、目標量に届いていません
つまり、普通にご飯を食べているだけでは、食物繊維不足だと言えます。
食物繊維が多い食品は野菜・果物・海藻・きのこ類・豆・豆製品・穀類などです。
意識して、積極的にこれらの食品をとる必要があります。
でも、これまでの食生活を改めて、野菜やきのこをたくさん食べよう!と意気込んでも、三日坊主で終わってしまうこともありますし、野菜ばかりでほかの栄養素が不足してしまうことも…?
たくさんの野菜を飽きずに食べるために調理するのも、正直なところ手間がかかりますよね。

そこで、食物繊維の摂取量を増やしたいと考えている方におすすめなのが、玄米です。
玄米は白米と比べて食物繊維量が約6倍も増えるので、普段炊いているお米を玄米にするだけで、食物繊維量が大幅にアップします。
ただ、玄米は浸水時間を長くしたり、圧力式の炊飯器や圧力鍋でないと炊きムラができるなど、少し工夫が必要です。
浸水時間を長くとるのは大変な場合は、無洗米タイプなど、通常の白米と同じように炊ける玄米を選んでください。
食感や香りに少しクセがあるので、食べ慣れていない方は白米9:玄米1ぐらいの割合からスタートし、徐々に玄米の量を増やしていくとよいですね(白米と合わせて炊く場合、浸水時間は玄米と同じと考えてください)。
玄米にすると白米よりもよく噛んで食べるようになるので、食べ過ぎを防ぎダイエット効果も期待できますよ。

食物繊維は消化器の健康を保ってくれる大切な栄養素。
不足なく摂るために、注意していきたいですね☆

Text byはむこ/食育インストラクター