酢って発酵食品だったの??先人の知恵をご紹介します

発酵食品というとヨーグルトや納豆、塩麹にキムチなどが一番に思い浮かびますよね。
発酵食品には、多彩な種類がありますが、今回は「酢」に注目!
酢は発酵の力を利用した食品の「パイオニア」といえるかもしれませんよ。

【最古の調味料!?

酢と酒は人類が手を加えた最古の調味料だと言われています。
酢が記録上初めて登場するのは紀元前5000年頃のバビロニアで、デーツという果実から酢を作っていたようです。
紀元前2000年頃になると商業として酢を造り始め、紀元前400年頃には抗菌作用に注目し、酢を治療に使っていたという記録が残っています。
日本での歴史をみると、5世紀より以前から自然発生的に酢の存在は知られていたものの、中国から酒の醸造方法が伝わり、同時に酢の作り方も伝来してから本格的な製造が始まったと言われています。
奈良時代には税として徴収され、上流社会の食生活に調味料や保存料として使われていたという記録が残っています。
そして江戸時代には酒粕を利用した酢を造る技術が生まれ、庶民の手にも届くようになり、1640年頃に生まれた寿司の大流行で酢が広く利用されるようになりました。

【酢になるまでの道のり

酢になるには、最初はお酒造りから始まることをご存知でしょうか。
短期間でできるよう違う製法で造ることも可能ですが、今回は伝統的な米酢の製造法をご紹介します。
まず最初に米を蒸し、麹菌を混ぜ数回に分けて水を加え発酵させます。
このとき、米に含まれるでんぷんが麹の酵素で糖になり、その糖を酵母の力によってアルコールに変えるという発酵が行われます。
1ヶ月ほど経ち、発酵が終わると酒と酒粕に分ける作業を行い、日本酒の完成です。
日本酒として利用する場合はここで加熱して発酵を止めますが、酢の場合はさらに酢酸菌を加えて数週間ほど酢酸発酵させ、熟成させた後、ろ過したり調整して完成します。
この工程のうち、原材料を穀物にするか果物にするのかや、時にはアルコールを利用するか、発酵させる場所がタンクなのか壺か等で風味や製造期間などが変わるので、世界中にそれぞれの土地に合った色々な酢が存在するのです。


【酢の効果を一挙にご紹介

まず、調理効果をみてみましょう。
酢は酸性なので保存効果が高いことはご存知の方も多いと思います。
この他には、食材への浸透性が高いため薄味でも中まで染み込む効果があります。
これを利用して肉類の煮込み料理に使うのがおすすめです。
また、塩の味を引き立てる効果も期待できるため、減塩にしても美味しくいただけます。
さらに健康効果もみていきましょう。
酢にはクエン酸が含まれていて、疲労回復に役立つほか、最近の研究では高血圧の人の血圧を下げるとも言われています。
酢を上手に利用すると色々とありがたいこともありますが、直接飲むと酸性が強すぎるので、飲用の場合は5倍以上に薄めたり調味料として使うなど、大人は1日大さじ1杯を目安に摂るとよいでしょう。

いかがでしたか。
数千年前からの歴史をみると、先人たちが工夫を重ねたおかげで、私たちは楽しく健康的に利用できることが分かります。
これを機に、いつも同じ酢を利用するのではなく、原料や発酵の仕方の違う酢も手に取ってみてはいかがでしょうか。

Text by ゆず/食育インストラクター