和食の名脇役、「わさび」にも旬がある!?

ツンと鼻に抜ける独特の辛みが魅力の「わさび」。
すしやそばなどの日本料理に欠かせないもので、古くから愛されている日本原産野菜のひとつです。

【わさびの歴史

わさびは、大きく「沢わさび」と「畑わさび」に分けられ、私たちが一般的にわさびと呼んでいるのは、「沢わさび」です。
沢わさびは、1年を通じて水温が8~16度の水質のよい場所で育ちます
日本では長野県と静岡県がわさびの産地として有名です。
畑わさびは、その名の通り畑で栽培されるわさびです。
沢わさびに比べて色や香りが弱いため、加工品や練りわさびの原料として多く使用されています。
わさびは、日本に自生していたため、起源は定かではありませんが、奈良時代には薬用として活用されていたと言われています。
その後、平安時代の書で日本最古の薬物辞典である「本草和名(ほんぞうわみょう)」に漢字名「山葵」で登場しています。
当時は、山間の渓流に自生したものを利用しており、上流階級の人が主に香辛料として珍重していました。
江戸時代に入ると、わさびが栽培されるようになり、そばや江戸前寿司の薬味として、庶民にも広まって行きました。

【わさびのすりおろし方

最近では、スーパーや百貨店など、多くの場所で生わさびが売られています。
お家で使ってみようと手に取ったものの、「どうやって使うのか分からない」ということも。
そこで、生わさびのすりおろし方をご紹介します。

茎を手で取り除く。
取り除いた茎は、キレイに洗って細かく刻み、マヨネーズやみそと合わせるのがおすすめです。
わさびマヨネーズはスティック野菜に、わさびみそは肉のソテーなどによく合います。

包丁で外皮の黒いところをこそげ落とし、水で洗って水気をしっかり拭き取る。

「の」の字を描くようにやさしくすりおろす
茎に近いほうが新鮮です。
一度にたくさん使うことが出来ず、残りを数日保存するのであれば、香りがよいうちに新鮮な茎の方から使うのをおすすめします。
(時間が経つにつれて香りが弱くなってしまうので)

わさびは、一度にたくさん使うものではないので、1本購入してもなかなか使い切れませんよね。
1~2週間くらいであれば、冷蔵庫で保存することが可能ですが、それ以上になる場合には、まとめてすりおろし、ラップに平らに伸ばして冷凍するようにしましょう。
使うときは、使いたい分を割って解凍します。
そのときに、ひとつまみの砂糖を加えて混ぜることで、辛みが少しだけ復活します。


【わさびの選び方と保存方法

わさびは1年を通して収穫できる野菜ですが、特有の刺激的な辛みを楽しむなら、冬のわさびがおすすめです。
全体が鮮やかな緑色で、太さが上から下まで均一なもの、傷や黒ずみの少ないものを選びましょう。
また、手に持ったときにずっしりと重みがあり、乾燥していないものがよいとされています。
保存するときは、水で湿らせたペーパータオルで全体を包み、ラップに包んで冷蔵庫に入れます
使った箇所を薄く切り落とし、グラスなどにわさびを立てて入れ、頭が出るくらいに水を張って冷蔵庫で保存することも可能です。
こまめに水を替えれば、2~3週間は日持ちします。
それ以上の場合には、先ほどご紹介したように冷凍保存しましょう。
香りや辛みは弱くなりますが、1か月くらいは保存可能です。

【わさびはすりおろすことで辛くなる!?

わさびと言えば、ツンと鼻に抜ける辛みが特徴ですが、実はこの辛み、そのままかじっただけでは感じられません。
細かくすりおろすことで細胞が壊れ、辛みの元になる成分が水分と混ざり合って酵素の力が働き、辛みが引き出されます。
この辛み成分は、アリルからし油(アリルイソチオシアネート)と呼ばれるものです。
アリルからし油は、優れた抗酸化作用があり、食中毒の予防やカビを抑える効果が期待できます。
さらに、生魚などの生臭さを軽減する働きもあり、江戸前寿司にわさびが使用されるようになったのも、魚の生臭みを消すことが発端であったと言われています。
ほかにも、食欲増進や消化吸収の促進にも役立ちます。
わさびには、ビタミンやカリウム・カルシウムなどのミネラルが比較的多く含まれていますが、一度に多くの量をとれないため、栄養成分での効果はあまり期待できません。

【加工わさびの種類

ペースト状の「練りわさび」と「おろしわさび」、粉末状の「粉わさび」に大きく分けられます。
加工わさびには、日本生まれの「本わさび」のほかに、ヨーロッパ原産の「西洋わさび(ホースラディッシュ)」が使われています。
西洋わさびは、わさびに比べて辛みが強いのが特徴で、海外ではローストビーフに欠かせない薬味として知られています。
日本では、主に北海道で生産され、「山わさび」とも呼ばれています。

■練りわさび
乾燥させて粉状にした、本わさびと西洋わさびに水を加えて練り、調整加工したもの。

■おろしわさび
生の本わさび、西洋わさびをおろして使用したもの。

■粉わさび
主に西洋わさびを乾燥させて粉状にしたもの。水を加え、よく練ってから使用します。

普段使いには、この加工わさびを使うことが多いと思いますが、商品パッケージに「本わさび使用」、「本わさび入り」と書かれていて、「どっちを購入したらよいのか迷ってしまった」ということはありませんか?
これらは、日本加工わさび協会で定められた表示基準があり、原料のわさびのうち、本わさびが50%以上の商品には「本わさび使用」、50%未満であれば「本わさび入り」と表示されています。

わさびは、刺身やすし・そばなどの日本料理だけでなく、ステーキやチキンソテーなどの肉料理、クリームパスタやアボカドを使ったサラダ・ポテトサラダなど、少しこってりとした洋風メニューにもよく合います。
生のわさびは香りが格別です。
ぜひ、みかけたときには、料理に活用してみてはいかがですか。

Text byまち/食育インストラクター