和食と栄養~エネルギー産生栄養バランスとは?

和食がユネスコ無形文化遺産に登録されているのをご存知の方も多いと思います。
その登録理由に和食の特徴の1つとして、「健康的な食生活を支える栄養バランス」というものが挙げられました。
和食の一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われています。
さらに、うま味を上手に使うことにより、世界でも類をみない動物性油脂の少ない食生活を送っている国、だったはずなのですが。

【危うくなった日本の食事】

40年ほど前の日本の食事は欧米化も「ほどよい」もので、肥満や心臓病・糖尿病もそれほど多くなく、その食事スタイルは世界的にも高く評価されていました。
しかし、現代の日本人の食事は動物性油脂が増え、たんぱく質や炭水化物のバランスが崩れている状況です。
また、全体的にビタミンやミネラルも不足傾向にあります。
このため、肥満や高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病が増加した原因に挙げられています。

【エネルギー産生栄養素バランスとは】

以前から、栄養学には「PFCバランス」という考え方がありました。
これは私達の体を動かすのに必要なエネルギーの基となる、たんぱく質(protein)、脂質(fat)、炭水化物(
carbohydrate)の頭文字から付けられたものです。
たんぱく質を頂点とする三角形を描いた時、正三角形に近いほど理想的な比率になるという考え方で、バランスの取れた食事の目安として食事の「質」をあらわす指標になっていました。
2015年、生活習慣病の増加を重く見た厚生労働省は、PFCバランスの名称を「エネルギー産生栄養素バランス」と改め、食事摂取基準に導入しました。
これは、エネルギー産生栄養素バランスに沿った食生活を送ることで、代謝が起こりやすく、身体の老化を遅らせ、生活習慣病にかかりにくくなる!ということを目標としています。


【エネルギー産生栄養素バランスを実践してみよう!】

エネルギー産生栄養素バランスの具体的な数値は
たんぱく質:13%~20%
脂質:20%~30%
炭水化物:50%~60%(アルコール類を含む)
となります。
でも、毎食この数値内に収めるのはとても難しいのも事実。
そこで、以下の簡単な目安を覚えていただくのが良いでしょう。

肉・魚・卵・大豆製品(たんぱく質)=1(1食当たり60g~80g)
野菜・きのこ・海藻(ビタミン・ミネラル)=1.5(1食当たり90g~120g)
ご飯(炭水化物)=2(1食当たり120g~160g)

※肉や魚は身体をつくる大切な栄養素を含んでいますが、同時に動物性脂質も含まれているので、食べ過ぎないことが大切です。
※脂質や糖質を燃やすためには、十分なビタミンやミネラルが必要となります。

これらの注意点も意識するようにしてくださいね。

【やっぱりすごい一汁三菜】

一汁三菜とはご飯・汁物・主菜1品・副菜2品で構成された献立のことで、原型を辿ると平安時代の後期にまで遡ることができるそうです。
栄養価の高い旬の食材を使い、魚などたんぱく質系の主菜は1品、その他は野菜やきのこ、海藻をたっぷり使った副菜と汁物といった献立だったようで、味付けはごく少量、薄味が基本でした。
不足しがちなたんぱく質も、豆腐や味噌といった大豆製品を組み合わせることで、上手に補っていました。
エネルギー産生栄養素バランスと聞くととても難しい印象を受けるかもしれませんが、和食の一汁三菜は「栄養の質」を上手に取り入れた先人達の知恵だったのではないでしょうか。
とはいえ、一汁三菜は多忙な現代の食生活で実現するのは難しい!とおっしゃる方もいるかもしれません。
主菜1品に副菜2品は自分で調理すると時間や手間がかかってしまうもの…
確かに一汁三菜ならどんな調理法や食材を使ってもエネルギー産生栄養素バランスが保たれるというわけではありません。
ですから、あくまでもイメージや目安、目標の1つとしてとらえて頂くと良いでしょう。

これからもずっと若々しく、元気に年を重ねていきたいという思いは誰しも一緒。
和食の良さを見直して、日々の食事に上手に取り入れてみてはいかがでしょうか?

Text by はむこ/食育インストラクター